僕の一番大切な仕事はスタッフのランチを作ること
僕が週2回スタッフのランチを手作りする訳
・僕らの会社は東京巣鴨にあります。有名なとげぬき地蔵がある高岩寺は、大きな道路(白山通り)をはさんでお向かいさんです。
僕と相棒の目黒君と女性スタッフ3名、計5人で会社を切り盛りしています。
僕らの会社はほとんど外回り営業とかしないので、営業日は毎日5人が顔を合わせています。
仕事スペースは25畳ほどのワンフロアで、互いに何をしているか一目瞭然です。
ここで週に2回ほど僕がスタッフのお昼ご飯を手作りします。まあ給食のおじさんというわけです。
始めたのは一昨年の秋、きっかけはスタッフの食べていたカップ麺でした。
その頃昼時になると、いろいろなカップ麺のにおいがフロアに漂ってきました。
家からお弁当を持ってくる時もあるのですが、
忙しい時期になると下手すると朝からカップ麺を朝食替わりに食べる猛者もいました。
あいにく近所には適当な外食の店がなく、コンビニで弁当とカップ麺を買ってきて食べる、
という毎日です。
確か僕らはこだわりの「お米屋さん」で、
日本中の方々に安心して食べられるおいしいお米をお届けしているはずなのに、
そのスタッフが毎日カップ麺のお昼を食べているってどんなもんだろう、
というのが僕のささやかな疑問でした。
お客様に味わってほしい体験を自分たちがしていなくてはお客様にきちんとした説明をすることができないと思いました。
お米屋さんなのだから、品種が違うと食味が違うことぐらい、知識ではなく、体験で知っていてほしいと思いました。
若いスタッフはプライベートでも子育てや家族やペットの世話でいろいろ忙しくて、
じっくりご飯作りに取り組む余裕がないかもしれない、
それなら会社でおいしいご飯の体験をしてほしい、というのが手作りランチを始めた動機です。
ただ会社は事務所スペースを借りているので、キッチンはありません。ガスも来ていません。
調理する場所と設備は小さな流し台しかありません。
仕方ないので発想を変え、この条件で作れるものを美味しく作ることを考えることにしました。
鍋物に使う家庭用カセットコンロと炊飯器を用意し、冷蔵庫を少し大きめのものに変えました。
まずはご飯を炊いて汁物を作り、お漬物・佃煮・納豆・サラダ・大葉やネギ、
しょうが、ミョウガなどの薬味、タラコや筋子や卵やシラス等火を使わずに揃えられる食材を用意。
それらを炊き立てのご飯に合わせてトッピングし、
のっけご飯にして食べます。お米は本業ですから品種も精米度も様々取り揃えて、違いを味わってもらいました。
「今日のお米は・・・つや姫?」 「はずれ、さわのはなです。」
「鳥そぼろにはやっぱりネギですね。」
「これってどこのお漬物ですか」「京都のお土産」
「このピリ辛もろみ漬けってどうやって作るんですか」
「醤油と麹を合わせて「醤」を作って、それに青唐辛子を刻んで3日間寝かせる」
そのうち、作り置きできる総菜を家で作ってもってきて、電子レンジで温めて食べるようになり、
会社の食卓は一層カラフルになりました。
またジャンクな粉ものが好きな相棒の目黒君が、時々宅配ピザや新しくできたたこ焼き屋のお持ち帰りを差し入れます。
これもスタッフには大人気です。
“同じ釜の飯”というのは本当です。一緒に食卓を囲んでいると温かな空気が流れる気がします。
それが仕事のモチベーションにつながっているかどうかはわかりませんが、
同じ仕事するなら、楽しい気分で仕事したほうが良いですよね。
今日も2階の書庫でエプロンを着けてランチの下ごしらえをしていると、スタッフが覗きに来ます。
まもなく仕事フロアでは“本日のランチ”情報が共有されるでしょう。
今日のお米はササニシキの玄米、コンブといりこで引いた出汁の澄まし汁に、メインは・・・。